(前号から続く)
横断歩道で歩行者が待っていても車は止まらない、この現状を変えるためにはどうすればよいのか。どうすれば、横断歩道を歩行者最優先の場所、本来の機能を取り戻すことができるのだろうか。
道路交通法第38条にはきちんと規定されています。車は、横断歩道に接近する場合は止まれる速度で接近すべきこと(第1項前段)、横断しようとする歩行者がいる場合には止まること(第1項後段)が定められています。
しかし、それが違反であることを知っているドライバーはほとんどいませんでした。横断歩行者妨害違反そのものの検挙件数も、2013年は5,400件余で一時停止違反の1/16以下でした(愛知県)。つまり、ドライバーにとって馴染みのない違反でした。
それが違反だからと、直ちに検挙活動を強化することは可能ですが、目的は横断歩道の本来の機能を取り戻し、横断歩行者を守ること、歩行者優先の交通環境を創ることであり、一方的に検挙活動を強化するだけでは、警察活動に対する反発を生み、一時的な変化をもたらすに過ぎません。それが目的ではないのです。
そもそも、警察組織が交通違反を検挙するのは、違反行為が行われたからですが、それだけが取締活動の目的なのかという思いがありました。それだけではなく、達成すべき新しい交通環境があり、それを実現しようとするときに、指導警告では実現できないが、取締活動を行うことによってその安全な新しい交通環境を実現することができるのであれば、その取締活動とは、警察にとって大切な、行うべき義務を伴う警察活動なのではないのかと考えていたのです。
次に、道路交通法第38条の機能について考えていました。その規定を尊重し、多くのドライバーがこれを遵守することによってどのような効果が期待できるのか、ということです。
信号のない横断歩道の手前には、道路上にダイヤマークが表示されています。愛知県の場合、手前のダイヤマークは45m(全国的には50mが多い)の位置に表示されていますから、その上を速度60km/hで通過した場合、その瞬間に歩行者を発見しても止まれません。時速60km/hで走行している車の停止距離は約44mだからです。
つまり、歩行者を発見して停止するためには、50km/h以下に減速していないと、歩行者を発見しても止まれないのです。そのため、横断歩道手前において、先ず減速するという運転行動が必要になります。
(次号に続く)